才太郎畑

日々の備忘録にしたい

2023年度下半期おでかけまとめ(10月~2024年3月)

2023年度のお出かけを備忘録にした記事。後編です。年度なので2024年の3月までです。

10/15 たばこと塩の博物館(東京都墨田区

 この館に来たのは初めてだったのだが、テーマに特化した常設展がとにかくすごかった。館名のとおり「たばこ」と「塩」の2つの展示で構成されているのだが、それぞれのジャンルに特化した資料が集まっていて興味深いし、展示方法自体も創意工夫に富んでいて飽きない。例えば塩の展示コーナーには、大きなディスプレイの上に塩の標本を置くと、その塩の原産国や生産国、種類(岩塩とか天日塩とか)が画面に表示されるハンズオン展示がある。こういう視覚的に分かりやすいし斬新な展示ってわくわくするよね~~!と同行者とずっとはしゃいで塩置いたりとったりしていた。

置いた標本同士が原産国と塩の種類で関連づけられる様子。ハイテク~~!

 たばこの展示ゾーンでは、たばこが儀式に使われていたとのことでマヤ文明の遺跡が紹介されていたが、夏に行った古代メキシコ展伊豆シャボテン公園に引き続き、図らずも3度目の古代メキシコ文明との邂逅。もはや運命(何の運命?)なのでは、と思えてくる。この展示はたばこに関する資料数が膨大で、各国・各時代のたばこ文化に触れられて面白かった。昨今たばこがこんなにポジティブに(少なくともマイナスな表現がない状態で)紹介される場所はそうないと思う。

展示の中で一番好きだったポスター。AIに作らせたんか??

 2015年に移転・リニューアルが行われたからか、はたまた運営元が企業であるからか、館内は綺麗で明るく、整頓されている印象だった。ミュージアムショップにも日本中の塩とか珍しいたばこが売られていて、徹底したジャンル特化型ミュージアムで大満足だった。元々お目当ては同行者が気になっていた特別展「芥川龍之介がみた江戸・東京」だったが、こちらはチケットとあわせて簡易的な図録パンフレットもくれる太っ腹ぶり。雨の日だったからか、人も少なくのびのび見れてよかった。

 

11/2 母校の文化祭

 9月に久々に大学時代の先輩に会ったことをきっかけにコミュニケーションがとれ、今名古屋に住んでる先輩と昭島に住んでる先輩と幡ヶ谷に住んでる先輩を引き連れて母校の文化祭に参戦することができた。実は大学時代つくった地銀の口座解約を行わずに卒業・引っ越ししてしまったため、なけなしの預金を回収するという目的もあった。そのため諸先輩方より先に現地入りし用を済ませ、当時の登下校ルートをゆっくり歩いて思い出に浸ろうかと画策していたが、さすがに卒業してから1年も経っていないので浸るほどの感慨はなかった。なんなら、在学中一度も見かけたことのなかった弊社の営業車が真横を通る偶然に遭遇し、翌日の仕事を思い出してげんなりするなどのイベントもあった。

 先輩と合流しOBとして寄席を開催している落研の教室へ訪問すると、先輩が来ていることで緊張しまくって本番で調子崩してしまった子や、見かけるなり崩れ落ちるほどのリアクションを見せてくれる子など、みんなそれぞれに喜んでくれてありがたいやら気恥ずかしいやらだったが、真に明日の活力になるのはこういう自己肯定感なんだろうなと思った。いわゆる卒業後も度々部活に入り浸る厄介なOBの気持ちが分かるような気がした。コロナ禍によって一時は存続が危ぶまれるほどだった我が落研だが、どうにかコロナ禍を乗り切った結果、耐えきれず潰れてしまった放送部などに本来流れていた人間たちの受け皿となる形で人数を増やし、今は落語だけでなくピンでコントをやる者、フリップ芸をする者、コンビでM-1出場する者たちなどバラエティ豊かな団体になっていた。変わっていくものと変わらぬものが鮮明に見えて、エモい。

 京都にいる同期に後日話をしたところ、散々羨ましがられ、来年は絶対行く!とのことだったため、とりあえず今年の秋も行く予定になっている。今年卒業する一個下の後輩もついてくるはずだ。厄介なOBOG陣にならないようにしたい。

 

11/25 大ナゴヤツアーズ「みうらじゅんも愛した名古屋の仏像めぐり!<大須編>」(愛知県名古屋市

 

 前述の文化祭に行くため連絡を取りあっていた10月頃、その内の一人の先輩から誘われた。その人は名古屋在住だが、なんでも、今度仏像巡りをテーマにしたツアーが開催されるらしい。私が仏像が好きなことを覚えていてくれたようだった。この先輩は出会った頃からポーカーフェイスでつかみどころがなく、今もフリーターをしながら自由に生きている人だ。先輩と同じ趣味がある同期の方が仲が良かったので、在学中に二人きりで遊びに行くとか、ましてや一対一で話すこともまともになかったので驚いた。新たに関係性が生まれることもあるんだな。縁は切ろうとしなければ意外と切れないものだと感じる。良い機会だったので二つ返事で参加を決めた。翌日には有給をとって夜行バスもホテルも予約して、突然弾丸名古屋旅行が決まった。

ツアーの集合場所でもあった七寺。読みはななつでら。

 ツアーで巡ったのは七寺、栄国寺、大黒屋(名古屋仏壇のお店)、京屋伊助商店(仏像制作・修復を行なう工房)。個人が野良では入ることのできない場所に入れ、間近でじっくり仏像を見ることができ、その道のプロ(住職や職員)から生の話を伺うことができるのが他にない経験だった。レポとか描けたらいいな、と思いメモとったりしていたけど、時間なくて何もせずにいる。東海地方の仏像についてのムック本を書いているというツアーガイドの方が、寺所蔵の文化財をどうにかして見せてもらおうと交渉するも住職が渋り、そこをなんとかとわりと食い下がってたりしたのは面白かったんだけどな。ただ、今回ツアーという形式の催事に初めて参加したが、私は鬼のように目立っていた。参加者は比較的年齢層が高く、最初から我々だけちょっと浮いていたし、さらにこのツアーは名古屋という地域に根差して行われており、他の参加者は市内や県内、近隣の地域から訪れており、わざわざ夜行バスに乗って遠方から参加していたのは私だけだった。それもあってか他の参加者やガイドさん、スタッフの方に度々話しかけられたが、天性の人見知りを発揮してめちゃめちゃ緊張しあまり喋れなかった。ツアー終了後そこそこ落ち込んだ。先輩にももっと喋れば良いのにと思ってた、と言われた。まあ初めてだったしどんな雰囲気なのか分からなかったし、と思うことにして、次の機会があったときはもっと積極的にいけるように心構えをしたい。

 ツアーの前後に道歩いていたときも思ったが、寺が生活圏に急に出てきて、地域に密着している感じが関東出身の者としては驚いた。地元の人間である先輩からはそう?と言われた。関東は拡大しすぎたかもしれないが、私が生まれ育った北関東のほどほどの市ではこんな光景は見られない。ちなみに名古屋には、清州から名古屋へ都市が移転された「清州越し」とよばれる歴史があるそうで、その際に多くの寺が映ってきた関係でそもそも数が多いらしい、というのもツアーで聞いた。やはり見知らぬ土地には新たな学びがある。

 

11/25 名古屋市科学館(愛知県名古屋市

 ツアー後は軽くご飯食べたり大須商店街をぶらついたりして、 夕方ごろプラネタリウムを目当てに市立の科学館に向かった。広い公園の中にある館だったが、市立とは思えない程の規模でエリアも広く、展示もハンズオンやギミックの効いてるものがたくさんありワクワク感が掻き立てられた。だからなのか、予想に反して子供連れの来場者がだいぶ多く、ガキんちょにタックルされ触っていたハンズオン展示を奪われたりもした。なんだったんだあのクソガキ……

土の中を学べるという展示。規模もすごくて感激。子ども用だったので潜るのは止められた

 ただお目当てのプラネタリウムは上映時間が終了しており、膝から崩れ落ちそうになったが、常設展だけでも充分楽しめた。さすが名古屋市

 この日はその後、ワインと名古屋おでんが有名なお店で夜を過ごし明日に備えた。昼も矢場とんの串カツを食べ歩きしたりしたが、名古屋美味しいものがいっぱいあってすごい。

カモシヤというお店です。おでんもハヤシも全部美味しかった。

 

11/26 博物館明治村(愛知県犬山市

 日本近現代史オタクにとってのディズニーランドくらいの魅力があるここ、明治村。いや、文字通り近現代の遺産・建築を一箇所に集めたテーマパークだよな。存在意義としては博物館だけれども、肩肘張らずともレトロな建物、町並みを見て感じるだけでも楽しめる。先輩曰く、小学校の遠足以来だという。名古屋の小学生贅沢すぎるだろ。

 実は数年前にも訪れたことがあり、その際とある展示において心残りがあったが、今回の訪問で悲願を達成することが出来た。ちょっと大仰すぎるか。

とりあえず持ってた新書と撮った坐漁荘。付箋の量がちょっとキモい推し撮り。

 その場所とは西園寺公望別邸『坐漁荘』。中に入るには土日祝に開催されるガイドさんのツアーに参加するしかないのだが、以前は春休みの平日だったので断念していた。今回念願叶って見ることのできた坐漁荘の内部は、造形の一つひとつが特徴的で洗練されていて眼福。粋。さすが公家。応接室や本人の居住するエリアはそうだが、比較的簡素な使用人用の部屋もしっかり設置されている。さすが元老。ツアーに参加していた人数は数人程度だったからか、わりとサクサク進んでしまい、写真撮ってもいいですよ〜〜と言ってくれたわりには写真撮る時間があまりなくて少し残念。しかし、いわゆる推しの旧居を体感することができて大変満足。

 西園寺公望、つまり園公は、一般的な公家のイメージからは異なるような、人何人殺してんだってくらいの目つきの悪い人相が素敵。実際戊辰戦争の時従軍してるし実際経験あるだろうが。また禁門の変のとき、自邸の門前が戦場となってしまい、塀を蹴り破って帰宅したというエピソードがだいぶアグレッシブで一番好き。

 完全に自分の趣味で同行してもらっていたが、先輩も金カムが好きだそうで、網走監獄とか楽しんでくれていたようで良かった。充実した名古屋・犬山旅だった。帰りも夜行バスで、月曜当日の朝5時に家に到着。1~2時間ほど仮眠して仕事に向かったが、この日は仕事終わりに異動になる先輩の送別会があって拒否できず、大変辛かった。だいぶ無茶だったこれは。次があった時は絶対帰りは新幹線使う。

 

01/14 東京ステーションギャラリー「みちのく いとしい仏たち」(東京都千代田区

設置されているフォトスポットをそのまま撮影するのが陰キャ

 中学以来の友人3人と夜飲みに行くことになり、そのうち一人は一日フリーだったので、お昼頃から遊ぼうとなった。会場は上野だったので、お昼から東京駅で会うことになった。

 東京駅構内という、珍しい立地のため以前より興味があった。そこで仏像をテーマとした展示が行われるという絶好の機会だった。友人と一緒に行く予定だったが、遅刻してくるとのことで、元々あまり興味がないだろうところを誘ってしまったのもあり時間つぶしがてらソロ参戦することにした。駅での待ち時間に教養に触れられるなんて、良すぎる。

 エントランス、展示室共にスタイリッシュで綺麗な雰囲気だが、階段等には竣工当時?の煉瓦の壁面が残っていて、さらに重要文化財だという。借り物展示の博物館だと思っていたが、東京駅の建築を保存する博物館でもあったのか。

 みちのくの仏像というテーマで、ゆるい、かわいいといった触れ込みの言葉通り、丸っこくユーモラスな像が多く癒された。だが裏を返すと造形技術的には稚拙ともいえる。どれがどれだか判別できない六観音像とか。しかしこれらの仏像はみちのくの人々の生活・文化風習に寄り添って生まれたものであり、優れた造形で国宝だったり重文だったりに指定されている仏像と比べたとしても、そこに優劣はない。よくトーハクとかでやっている有名な仏像や寺の文化財の巡回展とは違って、それを伝えたいという意図があったんじゃないかな〜と勝手に感じている。この展示はおそらくどちらかというと民俗学的なテイストで組まれていると思うし、また新たな視点で日本の仏教の形が見られて良かったと思う。

 

02/17 記念館三笠(神奈川県横須賀市

雲一つない青空で、海も青くて、この日は視界がずっと青かった

 職場の先輩に、雑談のつもりで横須賀行きたいんですよ〜〜と話をしたらじゃあ行く!?となり行ってしまった、横須賀。職場の人間関係だと休みの日も把握されているので、言った途端にすぐ決まった。一緒に来てくれる人ができて嬉しいが、いくら気を使わなくていいよ!と言われても職場の人には気を使うのでなんだか微妙な気持ちもあり。

 大きな目的はネイビーバーガーを食べること、スカジャンを買うことだったが、どちらも満足の行く結果になりそれはよかった。三笠は、さすがに横須賀来るのに無視して通れないだろ、ということで来訪。駅から商店街を抜けどぶ板を通って向かうまででも町の三笠推しの熱意が伝わってきた。

 近現代史好きだけど、日露戦争の時期の日本史は知っているようで詳しくないのでもっと勉強しなければと思った。実際の艦に乗れるのは感動ものだし、船内の展示も興味深かったが、なんとなく知ってる人名も確か政マニのあの子だよな……みたいなおぼろげな記憶しかない。あと、日本海海戦のシュミレーションゲームがあり、ハンドルを回して三笠を操作し戦えるのだが、これがけっこう本格的で、記念館にあるものとしては中々のクオリティで驚いた。わりと操作が難しく結局私は負けてしまいました。歴史を改変してしまい申し訳ない。

 この日はその後横浜に移動し映画を見て、飲み屋で軽く飲んで帰った。一日でこんないろいろできるなんて、神奈川ってエンタメ詰まっててすごいな。

 

02/25 中山競馬場(千葉県船橋市

 職場の人間と度々開催していた競馬部、いつもは仕事終わりに地方のナイターだったが今回は中央GⅡ中山記念。当日はまさかの悪天候で馬場状態は稍重、それもあってか、例年人気決着で終わることの多い中山記念が今年は穴馬が差して人気馬全部飛んだ。他のレースはややマイナスよりとはいえちょこちょこ戻りもあったけど、このレースは大外し。最後12Rで馬単的中させなんとか5000円マイナスまで戻したが、結局全員負けて帰った。一緒に行った先輩の一人は今日だけで10万負けたらしくて怖かった。てかこの人は元ヤの人と知り合いだったり金遣いがサラリーマンのそれじゃなかったり、なんでこの仕事してるか分からないので普通に怖い。

 ギャンブル大好きおじさんたちとの会だったので、この日はパドックと投票所(?)と本馬場の往復しかしてません。次行く機会があれば馬頭観音を見に行きたい。でも次は府中だな。競馬博物館行きたい。

 

03/06 六本木ミュージアム「日向坂46展 WE R!」(東京都港区)

このキービジュ衣装芸術的でおしゃれで最高だと思います

 私はおひさまです。おひさまとは、日向坂46のファンの総称。2、3年前にファンになって以来、すごく快適な距離間で推し活をしている。曲は聞くけど、Spotifyで事足りてしまうのでCDは買っていない。ひなあいは毎週欠かさず見てるけど、コンテンツ多すぎてそれ以外のメディア出演は追いきれないことが多い。他ファンとの交流が苦手なのでファンの知り合いもおらず、ライブの現地参戦もわりとキツイレベル(4/5に行われた齊藤京子卒業コンサートは配信買いました)。推しに認知もされたくないのでミーグリなんてもってのほか。全然金を落としておらず、これでファンを名乗るのもおこがましいかもしれないが、私一人が財産をつぎ込もうがファンを辞めようが、痛くも痒くもないほどのトップアイドルグループであるからこそ、自分のペースで応援できる。それも含めて日向坂46が好きなのかもしれない。本来、推し活に限らず趣味は自分のペースで行うべきではあるが、往々にして身の丈を超えてしまうケースは多く、それが称賛されがちな世の中なので。

 そんなおひさまと言えるか微妙なファンではあるが、今回一人でも絶対行く!と決めてチケットを取ったのがこの展示会だった。博物館巡りが推し活より長く続けている趣味なので、展示という形で現役アイドルを見るという興味深さがあった。実際行ってみると、博物館展示とは全然文脈が異なり、手法も異なるので新鮮だった。導線ムズい箇所とか、なんでここライト照らさないのかな……と思った箇所もあったり。しかし最近ファンになった人でも楽しめます!とのメンバーの触れ込み通り、前身ひらがなけやき発足から年表を追うように(というか、年表のパネルが設置されそれに付随するように)展開されていて、自分がファンになる前の事柄についてもグループやメンバーのことを知れる構成で良かった。特に興奮したのはやっぱり過去衣装の展示。生地感とか細かい装飾とかはMVじっくり見ても伝わらない、実物見る価値が大いにあった。

 当たり前だが客層も普段行く場所と違いすぎるので、博物館に行く気持ちで赴いたのは間違いだった。今回水色で身を固めて(日向坂のグループカラーが空色なので、近い色にしたくて……)ソロ参戦したけど、一人で来てる人は人との距離感微妙にバグってるザ・男オタクくらいしかおらず、女子オタクも含めて仲間と連れ合いで来てる人が多くて驚いた。平日でよかった。怖すぎる。

 せっかくきたし、ということでグッズでだいぶ散財したが、この後押上のソラマチで仕事終わりの先輩と飯も食いにいってしまった。インドカレーってナンデカ!量多!というイメージあるけどここのインドカレーは値段の割にそこそこ……な量だった。都会ってそうか。未だに、大学時代に何度となく行った大学近くのインドカレーが量も多くて一番おいしかったと思う。

 

03/13 神奈川県立金沢文庫称名寺の賢聖衆」(神奈川県横浜市

最寄り駅から少し離れており、道に迷ったりして辿り着くまでわりと大変だった

 前述した横須賀に一緒に行った先輩と、またまたなんだかんだで今度は何故か金沢文庫に来てしまった。以前から気になっていたけど、ブラタモリきっかけで行きたい欲がさらに増し、博物館興味あるし行ってみたい~と言ってくれた先輩を連れてこの特別展の会期に滑り込んできた。いや、きてしまった。

 本展は、例えばトーハクとか大きな博物館で巡回展のようにして行っているような有名な寺・仏像の出開帳のような展示とは全く違う。大乗仏教において(まあ日本は大乗仏教圏なのでそれはそう)の阿羅漢や菩薩を扱った仏教史としての展示というか、だいぶ、かなり学術的。出開帳系は学びの中にも体験的なエンタメ性があるけど、金沢文庫の展示は歴史をモノを通して学んでいく静謐な空間だった。だいぶ玄人向けだ。正直最近原稿の関係で仏教史について本を読んだりしていたのでなんとかついていけた……か……??くらいの体たらく。展示室は狭く、おそらく常設展も紛れている中に組み込まれていて捉えにくい構成だったけれど、しれっと国宝が展示されていてビビった。そんなしれっとしかも大量に置いてあっていいものじゃないぞ、国宝だぞ。さすが金沢文庫文化財の保存という、博物館として一番重要な役割を徹底している館なんだろうな。

 やってしまったのはこれに興味あるかも~くらいの人を連れてきてしまったこと。私も初めて訪れたのでしくってしまった。絶対トーハクとかでっかいところ連れて行って面白さに目覚めさせてから行くべきところだった。だいぶ背筋が伸びた展示でした。

 

03/13 八景島シーパラダイス

 金沢文庫の後、なんか行けそうだからという理由でシーパラへ強行。シーパラ、小学校の修学旅行で行った以来だったので、遊園地ゾーンを通り過ぎながらあれ……こんなもんだったっけ……?という戸惑いがあった。平日だったため多少閑散としていたのはあるかもしれないが、記憶の中よりアトラクションが小さく寂れている感じがした。そりゃ記憶は美化されるし、今よりだいぶ身体も小さい頃だし、シンプルに10年以上経ったら錆びれもする。

 水族館はいくつかの建物に分散していて、比較的規模も大きく楽しかった。特に冷凍標本された深海魚を素手で触れたのがテンション上がった。冷凍標本自体展示されているところあまり見ないし(氷漬けなのでそれはそう)、冷凍してんのに触っていいのかい、という。硬いが生物の皮であることはなんとなく感じる絶妙な感触。他にもタッチプールとかハンズオン展示も多くて比較的賑わっていた。あとは、動物が同じところをずっと周回しているのはストレスの表れだというのはよく聞くが(常同行動というらしい)、このホッキョクグマはそうなのかな……と複雑な気持ちで見ていた。生態展示の重要性もわかるので極めて複雑な気持ち。ちなみにイルカショーは、会場についたときには時間が終わっていて見れなかった。

シーパラ名物「どうあがいてもいるかが当たるくじ」。抗えずやってしまった

 この後は中華街に行ってインド製の布を買い、小籠包とか肉まんとかタピオカとか食べ歩きして一日遊んだ日だった。本来の目的中華街だったんだけどね。

 

03/31 渋谷センター街(東京都渋谷区)

 上映館が限られてしまった「ボーはおそれている」を見に、わざわざ渋谷まで出向くはめになったので、「ペルソナ5」の聖地巡礼をしよう!と思い興味ない友人を引き連れてセンター街を練り歩いた。まあ練り歩いたといっても時間は限られてたし人も多くてじっくり観察できたわけではないけど。ペルソナ5(P5)にハマった話は他の記事(下記)でなんかベラベラ喋っているので割愛するとして、

sai-yasai.hatenablog.com

とにかく劇中の舞台の中心になった街・渋谷をついでに見てきたのだった。

怪しげな路地。この突き当りにベルベットルームがあって、右に曲がったところに岩井のおっちゃんがやってる武器屋があった。現在は通行止めになっていた


 ハチ公前もセンター街も、ここで何したなあ~~とゲーム中の出来事や映像を思い出せるほどで、P5の再現率に感動。とはいえ、劇中に年代は明確になっていないが(20XX年表記)ゲーム中のカレンダーは2016年の暦と一致するらしく、さすがに2024年の今ではわりと街並み変わっていて、喫煙所はなくなっていたし、ダメ寅がいたところは観光案内所みたいな建物が建ってたりした。満足。次機会があれば三軒茶屋も行ってみたい。

 ちなみに有名なブックカフェ「うのまち珈琲店」の渋谷店でクリームソーダを飲んだり、一瞬原宿に寄って古着屋を見たり、楽しかった。映画以外は。

 

まとめ

 流れに身を任せていたら意外といろんなところに行くことになっていた。幸せかもしれない。自分が思っていたよりお出かけが多くて、記事かくのがめんどくさくなってしまって、3月までのまとめなのに書きあがったのは4月も終わろうとしている時期。次回からは月1で記事あげるようにします。一つの記事の量としても今回長すぎだと思うし。

 話は変わるが、このブログの補助的役割として、写真を載せるインスタを開設しようと思います。

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 ブログに写真を載せてもいいはずだけど、やっぱり文章主体にしたいので、旅行中とった写真はこちらに乗せていきたいと思っています。ぼちぼち気ままに更新していこうと思うので、よかったら見てみてね。

2024年映画見たよ記録【3月】

 月1本映画を見よう企画、3ヶ月目。やはり目標があると見ようという意識が湧き……今月は2本。湧いたわりには普通。言い訳をすると、今月まで仕事が繁忙期だった上、原稿も並行していた(している)ため、気力体力共に枯渇ぎみで長時間映像に集中するのがつらかった。2月もメンタルの落ち込みがひどかったが、3月も引き続きダメダメだった。ただ、月末になってやっと春の陽気になってきたので今後は安定しそう。

 

 

君の名前で僕を呼んで』(2017/イタリア)

 アマプラにアカデミー賞受賞作品の一覧ができており、その中からろくにキャプション読まずに直感で見ることを決めた映画。映画に限らずドラマやアニメも、見ると決めたものはなるべく事前情報を脳に入れないようにしているが、少しは説明文読んだ方がいいと思った。

 避暑に訪れた北イタリアで、少年エリオと青年オリヴァーが出会い恋をするひと夏の物語だが、まず恋愛映画であることも、同性愛をテーマにしていることも知らなかった。夏の北イタリアの景色の美しさ、伴奏の綺麗さが良く、前半は特に時の流れがゆったり進み、物語的に大きな進展はないのになぜか飽きなかった。ただ、私がアセクシャルのためなのか否か、主人公エリオがオリヴァーへ恋慕を抱いていることにしばらく気づかず、中盤の初セックスシーン以降は集中が切れてダレてしまった。ずっとなんか距離感おかしいな?なんで??と思ってはいたが確証的な言動はなかったから……本来はここで淡い恋心を感じるシーンだったのかもしれないが、分からん……。多分恋愛ドラマが向いていない。

 しかし、息子が同性を好きになったことを真摯に受け止め、親として授ける父の言葉には感動して少し泣いたし、好きだったオリヴァーが結婚することを聞いて暖炉の前ですすり泣くラストシーンは美しく印象的だったし、アカデミー賞作品であることは納得、素敵な作品だと思った。とはいえまあ……自分にはあまりハマらなかったのは事実。

 

『ボーは恐れている』(2023/アメリカ)

 『ヘレディタリー/継承』(2018)『ミッドサマー』(2019)のアリアスター監督の最新作ということですごく気になっていたが、3時間もの長い間、逃げ場のない映画館で一人で見て耐えられるかが不安すぎて二の足を踏んでいた。その中、毎週聞いていた「ほら!ここがオズワルドさんち!」というラジオ(2023年3月惜しくも終了しました。泣)で、作家のせお先生が見たいと言っていた(このエピソード自体は映画全く関係ない話)のをきっかけに再度見たい気持ちが強くなり、私にアリアスター作品を推してきた友人を誘い映画館に足を運ぶことになった。友人も同じ理由で見るのを躊躇っていたという。我々がビビッているうちに上映館はどんどん減っており、わざわざ渋谷まで出向くはめになった。

 結論から言うと、不快。面白いより不快の感情が勝つ。何が悲しくてこんな天気のいい昼下がりの3時間をこの映画で無駄にしなければいけないんだ……アリアスターすごい、すごいよ。

 まず、とにかく長い。主人公ボーが実家に帰ってからアリアスター節というか、ちゃんとホラーっぽい流れになるがそれまでが長い。帰省できるまでにボーは荷物と鍵が盗まれ部屋がパリピ集団に乗っ取られる、天井に張り付いていたおじさんと風呂場でもみくちゃになって全裸で外に逃げたあげく車に轢かれる、フルチン殺人鬼おじさんにめった刺しにされる、自分を轢いた車を運転していた夫婦の家に転がりこむもいろいろあって命を狙われる、森で演劇やってる謎の集団に出会うも殺戮マシーンおじさんが追い付いて爆発してさらに逃げる……もう何???奇怪すぎる出来事は置いておいても、ボー、あまりにもタフすぎてびっくりする。常人だったら全裸で車に轢かれた時点で死んでるよ。

 そしてオチの後味が悪すぎる。いわゆる毒親の母を不意に殺してしまった後、ボートで海(湖?)に出ると、洞窟の中?の異空間スタジアムにたどり着く。そこでボーは母親側の主張だけが通るめちゃくちゃ不利な裁判にかけられると、エンジンが壊れボートが転覆してボーは溺死。静まりかえったスタジアムの映像にクレジットが流れ終わる。毒親に怯えるボーには共感できるが、子供とはいえ心ないボーの言動に何度も失望され続けたであろう母親の気持ちも、そうはいっても分からないわけではない……なんともいえない感情にさせられる、さすがアリアスター。しかし、『ミッドサマー』にあったようなある種の爽快感はなく、『ヘレディタリー』ほど、解像度の高さで胸糞悪くさせられるわけではない。上映後、友人と二人で首を捻った。シンプルに最悪な気分になった、というより釈然としない、という方が近い。誘ってごめん。

 爽快感はなかったと前述したが、最初の夫婦の家に拾われるボーには少し癒された気がする。私も人目をはばからず泣いてみたい、優しく受け入れられたいと思って泣きそうになった。まあそんな上手くいくはずもなく、ボーは命を狙われて飛び出すはめになるし、友人には「あの夫婦めっちゃ気持ち悪くない!?!?」と言われたし、自分自身も異常であることは分かっているんだが。思っているより疲れているのかもしれない。

 今作も、確か『ヘレディタリー』も屋根裏に化物がいるという展開があったように思うが、屋根裏は監督の中で何かトラウマでもあるんだろうか。今作の屋根裏の化物は、私が最近ペルソナをプレイしていたせいでどうしてもマーラ様にしか見えず、その後のシーンにしばらく集中できなかった。知らない人は一回ググってほしい。だいたいあれだから。

 

今月のまとめ

 累計視聴数・・・2本

 

 目標は達成したけれども、どちらの作品も個人的にはあまり刺さらなかったので満足感は薄い。来月に期待。

 来月は金ローで『すずめの戸締まり』をやるとのことで見ようと思っている。新海誠監督作品、一応『君の名は』と『天気の子』は見たんだが、正直作風は好きじゃない!ごめん!女性に対するまなざしがエロスケベ文脈なのでノイズになる。だが今作は震災を描いているとのことで、ポスト3.11作品としての興味深さと不謹慎ながらパニック映画的な期待を込めて気になっていた。あと、ついに今月『オッペンハイマー』が上映開始となり、フォロワーたちと見に行く計画がぼちぼち固まりそうなので来月も2本予定です。

『認知バイアス事典』を読んで~ペルソナ5プレイ感想を踏まえて~

読んだ本:情報文化研究所(山崎紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子)『情報を正しく選択するための 認知バイアス事典』フォレスト出版株式会社、2021年

 初っ端から本題と関係なさそうな話をするが、最近私は「ペルソナ5ロイヤル(以下P5)」にハマっている。言わずと知れた、アトラス社制作の人気RPGゲームのナンバリング最新作、その完全版タイトルだ。だいぶ前に発売されたゲームなので(P5Rは2019年、無印版は2016年発売)今更という感がないでもないが、安くなっていたので年末年始の暇つぶしに何気なく始めたらゲームシステムといいストーリーといい面白くてのめり込んでしまい、全クリした今も強くてニューゲーム状態で2回目の人生を歩んでいる。現実世界は春になろうというところだが、ゲーム世界では秋真っ只中です。

 タイトルの「ペルソナ」が心理学用語を由来としていることからも分かる通り(下記記事参照)、P5は素人ながら本作のストーリーやキャラクターの言動に心理学・哲学の要素が多く含まれているように感じた。

note.com

 P5は、ある日ペルソナ能力に目覚めた主人公たちが、パレスと呼ばれる異世界で怪盗となり、悪い大人・社会と戦い世直しをする、という義賊もの、ピカレスクロマン調の物語だ。このパレスというものは人の認知の強い歪みによってつくられるとされており、「認知訶学」という架空の学問(「認知科学」がモチーフなのは想像に難くない)が登場するなど、「認知」という概念が世界観・ストーリーの根幹にある。また、本作のマスコットキャラクターであり主人公の相棒・モルガナが、ラスボス戦後のムービーで「世界とは君たち自身が知覚できる範囲の世界のことなんだ……」的なことを言って消えていくのだが(※絶対こんなセリフではない。が、ニュアンスはだいたいこんな方向性だったはず……)、すごく哲学チックな表現だな、と思い印象に残っていた。しかし私はこの分野に関しててんで無知、改めて学べたらもっと深く作品を楽しめるのではないか?と考え、手にとったのが『認知バイアス事典』だった。

 

 本書が読者としてイメージしているのは入学したばかりの大学生だという。詳しくない分野について初めに本を読むなら、このような大学講義向けの、初学者をターゲットにしたものを選ぶのが良いと最近気づいた。「認知バイアス」についての様々なキーワードが数ページずつ解説されている構成で、とても読みやすい。そして差し込まれる図解やイラストのタッチがキャッチーでかわいい。学問のとっかかりとして申し分ない体裁だ。

 特に印象に残った項目は「フォルス・メモリ」という概念だった。その意味を本文より引用すると、

実際には経験していない事柄を経験したかのように思い出す現象のこと。虚偽記憶、あるいは過誤記憶とも呼ぶ。(P136)

とのことだ。あまりに無知すぎて、このようなことが実際に、しかもわりと普通に起こりうることを初めて知った。実は、自分では事実だと思って喋ったことが後になって嘘であることを思い出し、なぜさっきナチュラルに嘘ついてしまったんだ……?と困惑した経験が過去何度かあったので、これにちゃんと名前がついていてくれてホッとした。人間は物事に名前がついて、自分の手の中で捉えられるようになると安心する生き物なのだろうと思う。

 P5に、母親が自身の目の前で自殺したというトラウマから引きこもり状態になってしまった、佐倉双葉というキャラクターがいる。主人公たち怪盗団は彼女の認知世界・パレスに入り攻略を進めることでこの過去を知ることになるが、双葉は母親の死の原因を自分の育児によるノイローゼで精神を病んだためと思い込んでいた。その結果心の傷となり幻聴や幻覚といった症状に悩まされていたが、実は、これは周囲の心ない言葉から生じたフォルス・メモリによる誤解で、それに気づいた双葉は母親の死を克服することができ、最終的に主人公たちの味方となる。プレイ当初はそんなことある……?まあこんな状態になるくらいだしあるか……と違和感は覚えなかったが、実際知識を得てみるとこういうことだったんだ!と納得度が段違いすぎる。物語上の設定ひとつでも、完全なファンタジーより現実的に根拠のあるフィクションだと説得力が増すし、テンションあがるよね。とはいえ、この読み外れてたらめちゃくちゃ恥ずかしいので、フォルス・メモリってことで解釈することもできるよね、というところで手を打ってほしい。

 ちなみにゲーム攻略進めてたら、この認知についての解説を聞くイベントが発生してびっくりした。1周目真面目に話聞いてなくてすいません、丸喜先生……

 

 本の最後を締めくくる項目「知識の呪縛」では、あとがき代わりのメッセージが述べられている。曰く、認知バイアスのほとんどは無意識に作用するため知識がないと気づくことは難しい、この本を読んだことで知識を得たあなたは、次にバイアスに陥らないようにコントロールする技術を習得してほしい、と(P257)。確かに本書を読んで以降、今自分が感じている気持ちは認知バイアスによるものだな、と気づく瞬間が度々あった。例えば、仕事中に先輩とした会話のやりとりにめっちゃデジャヴ感じたけど、多分前にも似たようなこと喋ってるからだな、と気づいたとか。デジャヴはそんな大事なものではないが、このようにメタ認知ができることで、無駄に悩んでいたあれこれも減るのだと思う。確かこの本は続編が出ているので、今後そちらも読んでみたい。

 余談だが、P5はシリーズの中では多分こういう考察に向いてない方の作品だと思う。P5は体罰・セクハラ・虐待・ブラック企業……などなど社会問題を取り上げたストーリー構成の割合が多く、それがビターな世界観の魅力である一方、メインキャラクターたちがそんな社会の「被害者」という立場であることで個性づけられている部分があり、若干心理描写が薄いことは否めないからだ。こんなに語っておいて今更だが、双葉は作中そういう描写が一番多かった人物といっても過言ではないので……。反対に他のナンバリング作品はもっとキャラクター自身の心の葛藤が描かれていると聞くので、機会があったらプレイしてみたいと思う。それまでにもっと哲学・心理学に詳しくなりたい。

2024年映画見たよ記録【2月】

 月一で映画を見ようという取り組み、始めて2ヶ月目ですが……今月は1本!早々に目標達成ギリギリの数字!しかもその1本は人に誘われて行ったので自発的には何もしていない。まあ、今月は冬季うつの傾向が出てメンタル的にあまり調子がよろしくなく、映像を長時間見る体力がなかったので難しかった。来月は暖かくなってマインドも上向きになってほしいな。

 

映画『ゴールデンカムイ』(2024/日本)

 会社の先輩と遊びに行った時に帰りに見ようと誘われ見た。制作発表時は不安の声も大きかったがキャストのビジュアル発表で意見が一変し、公開された後も好意的な感想を聞いていたから決して気にならなかったわけではないが、誘われていなければ足を運んでいなかっただろう。

 ゴールデンカムイ、もとい金カムは元々原作漫画を最終話まで読破していて、好きな作品の一つだ。独特なギャグセンスとかっこいいバトルシーン、各所で差し込まれるグルメ要素、そしてアイヌ民族の文化や歴史に対する真摯な姿勢、エンタメの塊すぎるし、大きな影響を与えた作品だと思う。しかし、一度知った内容をもう一回見るというのがあまり好きでないので、アニメ版は未視聴だ。もちろん漫画とアニメでは表現方法も違うし、それぞれの楽しさがあることは知っているけれども、映像は自分の速度で物語を進められないのがネックで、原作読んだらそれでいいか……となってしまった。実写化決定の報を聞いた時も、皆の頭に一回浮かんだであろうあの監督でなければいいな……と思ったくらいで、特段感慨もなかった。いや、似すぎだろ……と驚いたビジュアルのキャラはいたけれども。

 今回縁があり映画館で見ることができたわけだが、実写化であるからといって特に気になった点もなく、良いエンターテイメントで素直に面白かった。アイヌの人物や村の造形、言語や文化風俗はかなり心を砕いて撮ったのだろうし、明治時代の北海道の風景は、他の作品等で描かれているのをあまり見たことがないから新鮮だった。登場する人物たちもみんな「そのまま」で違和感がなかった。尾形のあごとか月島の鼻の横の線とか、原作者のクセのある作画がちゃんと表現されていたのはすごかったけれど、特に牛島先生、見た目があまりに原作に忠実すぎてどうやったらこんな似るんだ……!?漫画からそのまま抜け出してきたんか??と感心した。あと、原作のこのシーンを読んでからかなり時を経ているので、詳細なストーリー意外と新鮮な気持ちで見れた。月島とのバトルってもうこの頃にやってたんだっけ、とか。

 心残りを挙げるならば、「俺たちの戦いはこれからだ!」感満載で終わったことは少しだけ不完全燃焼な気分だった。谷垣がニシパになってないし、勃起のおじさん(名前忘れてしまった……)も出てきていない、だいぶ序盤で終わってしまっている。ストーリー端折ってもしょうがないので尺の関係上仕方ないことではあるのだが、金カムはここからが面白くなるところだから。しかし、映画最後の連続カットでこれからのストーリーで登場するキャラクターのビジュアルがお披露目となり、原作を知っているファンには嬉しい演出もあった。現時点で続編が決定しているわけではないようなので、これは今回の興行収入によっては続編をつくりたい、という運営のメッセージなのだろう、と捉えている。私は家永カノをずっと推しているので(これを友人とか知り合いに言うとだいたい困ったリアクションをされるので心外である)、続編制作決定した暁には、どうか頼みます、もう一回原作作画すぎる牛島先生も見たいし……

 

今月のまとめ

 累計視聴数・・・1本

 

 既に述べた通り、今月は映画を見れるメンタルが保てなくて目標ギリギリの結果に。目標守れただけでも良しとする。引き続き『ボーはおそれている』が気になっているが、3時間あると聞いてトイレと視聴中の情緒が心配になってきた。人を誘うのもためらわれるが、一人で3時間耐えられるかがますます不安になってきたので、『ミッドサマー』を一緒に見てくれた友達を誘ってみようかな、と思っている。あと最近アマプラに『ヴァチカンのエクソシスト』が入ったと話題になっていたため、こちらも近いうちに見たいと思う。

2024年映画見たよ記録【1月】

 今年の目標は、月に1本以上映画を見ることに決めた。媒体は問わず、映画館での上映も家でアマプラも金曜ロードショーでも、とりあえず最後まで見ることができたら1本とカウントする。決まりはこれだけ。努力が嫌いで飽き性でもある怠惰な人間なので、1年を通しての目標を完遂するにはこれくらい緩くないと続かない。きっかけはせっかくアマプラ加入しているんだから今年こそはちゃんと活用しないと、というケチな気持ちだ。とはいえ、平日の帰宅後も休日も気づけばSNSのスクロールやネットサーフィンで時間を無為に過ごしてしまうので、強制的に良質なインプット機会を確保するのも大切だと思う。

 この記事はその目標の証明として、見た映画の感想を毎月書いていこうという取り組みだが、ネタバレを相応に含む内容になるかと思われるため気を付けて閲覧されたし。

 されたし、って言葉、人生で一度くらいは使って見たかった。これで人生の目標も一個達成できたね。

 

 

渇水』(2023/日本)

 私自身の個人的な理由で楽しめず悲しかった映画。これが月に1回映画を見ようプロジェクトの第1本目とは……

 水道料金未払いの家に督促に行く水道局員が主人公のドラマだが、私は督促業務が仕事内容にある会社に勤めており(水道局ではないです)、つまり主人公の言動全てがノイズになってしまった。そのため、本来捉えるべき角度からの感想が抱けなかった。以降で書く感想の内容は全くもって参考にしないでほしい。仕事でどことなく落ち込んだ気分になってしまい、情緒めちゃくちゃにしてほしい(私はこの欲望からしんどい映画見るのがわりと好き)……と思い、ちょうどよさげな尺で重そうなテーマの作品をアマプラでピックアップしたため、視聴前にちゃんと内容を精査していなかったのだ。この日は否が応でも仕事のことを思い出してしまい、さらに落ち込んで、この後しばらくメンタルの調子が悪かった。

 主人公の後輩を筆頭にして、水という自然にあるものに料金をかけ、払えなかった者に供給を遮断する、自分たちのしていることは道徳的にどうなんだ?という疑念を覚える人物が度々登場する。主人公も最初こそ仕事だからと言うものの、徐々に意識しはじめたようでセリフの端々にのぼるようになり、最終的にはぶっ飛んだ行動に出てしまう。この思考自体に現実味を感じられず、言動がチープに映ってどうも入ってこない。うちの職場はみんな殺意高いので。とはいえ、水道はガスや電気などのライフラインと比べ滞納時に供給遮断されるまでの猶予が長い、つまり生命維持において不可欠である度合いが高いとみなされているので、それを止めてしまった時の状況が目に見えてしまう、という部分が要因にあるのかもしれないが。

 唯一感情が上向きになったのは、この作品の舞台は群馬県前橋市で実は地元、水道局の事務所内に映るぐんまちゃんのぬいぐるみとか前橋市水道局のキャラクターとかがとても懐かしかったことだった。

 

ゴジラ-1.0』(2023/日本)

 ゲ謎と共にXのTLで騒がれまくっており、自認はミリオタではないとはいえ兵器の類は好きであったため、アカデミー賞ノミネートの数日後に見に行った。レイトショーだったが、わりと人が多く注目度の高さを感じた。

 劇場で見るべき映画だと思った。ゴジラの咆哮、破壊音、衝撃音など、音の要素が大きく、重低音が大音量で浴びれるという点で劇場体験がものをいう作品だと感じた。特にクライマックスの「海神作戦」の場面では音に加え、その重厚な戦闘描写に自然と身体が震えるほど興奮した。一言で言うならば快感、気持ちよかった。この作品によって私はパニック映画がわりと好きなのだと気づかされた。ゴジラがずっと恐ろしくて、人間がいくら手をつくしても死なない絶望感に大興奮だった。特に主人公たちが新生丸でゴジラと出くわし戦わざるを得なくなったとき、助けに来た高尾がボッコボコにされるとき、ゴジラの核ビームのチャージを見守ることしかできないとき、「海神作戦」にて陽動役で海上に出ていたはずの駆逐艦が、ひしゃげて空から飛んでくるとき。そういえば以前、普段映画を見ない母が金ローか何かで見た『MEG ザ・モンスター』(2018/アメリカ)を絶賛していた時期があった。血は争えないということか。

 この頃、劇場ではゲ謎こと『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023/日本)や『映画 窓際のトットちゃん』(2023/日本)、そして今作と戦中・戦後を時代背景とした映画が同時公開されている。ゴジマイの主人公・敷島は元特攻隊員だが、確か特攻隊員がテーマになった恋愛映画も同時期に公開されていなかったか。なぜこの時期に戦争をテーマとした映画が続々と公開されたのか、めちゃめちゃ興味深い。ゲ謎やトットちゃんは今のところ未履修のためどんな演出がされていたのか分からないが、これらの映画がどういった形で戦争を捉えているのかという観点は、すなわち令和の現代の戦争観がどういったものなのかを表す指針になると思われる。考察して論文書いて詳しい人。ゴジマイでは、海神作戦でゴジラを倒しきれない可能性があることを知った敷島が、戦後のどさくさに紛れ残っていた局地戦闘機震電での特攻を画策するが、実は機体に脱出装置が施されており生還する、かつての戦時体制のアンチテーゼとするように描かれているのが印象的だった。戦時中の人命軽視批判、政府への反感の部分は海神作戦の前夜の集まりにて語られているが、脱出装置の存在はゴジラの口の中に突っ込んだ後に知らされることになるため、おいおい~~ここで特攻成功しちゃったらダメだろ~~??と見ながら若干不安になっていた。原作はまあまあ特攻賛美な『永遠の0』(2013/日本)でさえ、特攻の瞬間は原作をちょっと改変して、どっちともつかない「無」の演出が行われていたと聞いたのに(『永遠0』自体は未履修です。これは大学時代、戦争映画についての講義で聞いた話の受け売り)、と思っていたがちゃんともっと面白くなっていた。ゴジラの銀座襲撃時に亡くなったと思われていた、ヒロインの典子が生きていたことも分かり、全員生存ハッピーエンド、で終わるわけではなく、典子の首には不気味な痣があるし、海中では死んだはずのゴジラの蠢きが示唆され終わらない恐怖を観客に与えて終わる。震電の特攻が成功しゴジラの沈黙が確認され、無音の中全員が次々に敬礼をするシーン、あれは特攻に対してではなく、ゴジラという「海神」を倒した神殺しに対する厳かさだったのだろう。この作品は『シン・ゴジラ』(2016/日本)とは反対に、民間主導の対ゴジラ戦がテーマになるが、それに至る時代背景の設定付けは、戦後政治史詳しくないとはいえ無理がないか、と思わないではなかったし、その点での批判もあるようだ。主題が史実設定のリアルさに左右されないものだったので、個人的には気にならなかった。

 人間ドラマ部分はそこまで重要視して見ていなかったものの、典子を失った敷島に野田先生が海神作戦への参加を持ちかけたとき、敷島の目が真っ黒であり、ここがゴジラ絶対殺すマンとしての敷島が誕生した瞬間だな、という演出が印象的だった。

 

娼年』(2017/日本)

 毎週聞いているカズレーザーのラジオ(SBSラジオ「週刊!しゃべレーザー」。リアタイではなくポッドキャストでですが)で、「ドMの美少年が出てくる」という話をしていたのがきっかけだった。ど、ドMの美少年……!?と衝撃を受け、あまりに見たすぎてアマプラ探してすぐに見た。身体を売る男性の話、といううっすらした情報は知っていたので多少は覚悟していたが、兎にも角にも濡場が多い……!私はアセクシャルのケがある、という自覚があるので(以下の記事でも書いていた)、作品のテーマ上仕方ないとはいえこうも多いと嫌悪感が優ってしまう。

sai-yasai.hatenablog.com

 ちなみにドMの美少年は性癖の都合上だいぶテンション上がったし嬉しかったが、話の中の1場面のみだったので残念だった。機会あれば原作小説を読もうと思う。

 これはアセクシャル関係なくシンプルに嫌いなだけかもしれないが、キスシーンがどうしても気持ち悪くて、なんで人間はこんな唾液まみれの粘膜接触を楽しめるの……??というドン引き状態になってしまったので、この作品はおおむねNot for meだった。ただ退廃的で淫靡なだけではないしおしゃれなので、好きな人は好きだと思うけど。

 

【番外編】『首』(2023/日本)

 これは去年の年末に見たので今月の1本にはカウントしないが、「映画、見てえ……」という気持ちをつくってくれた、そして月1で映画見ようと決意させてくれた良い映画だったため感想を書く。

 長年の付き合いの友人と飲みに行ったときに布教を受け、その後仲の良い先輩も感想をXで呟いているのを見かけ、自分の信頼している人間が2名以上良いという意見を発しているというお墨付きを得て見に行こうと決めた。

 私が見たのは仕事終わりのレイトショーだったが、曜日の関係なのか阿題材によるものなのか、観客は私を含め6人程しかおらずかなり快適だった。若干前目の席を取ったため前に座る人はおらず、雑音も聞こえずスクリーンをひとり占めしたかのような劇場体験が得られた。実はこれが人生初レイトショー、人生初一人映画館だったのでそれだけでも感動はひとしおだ。学生時代は気軽にいける距離に映画館がなかったし、金もなかったから(交通費だけで映画1本見れるような地方に住んでいた)、映画を見ることの優先順位は相応に低く、オタク友達に誘われた時のみアニメの劇場版だとか漫画の実写化作品だとかに行く程度だった。今は、通勤定期圏内の主要駅に降りれば近場にある3館の映画館から見たいものを選べるほど、エンタメの享受に恵まれた土地にいる。人生は分からないものだなと思う。

 事前情報で入っていたのは戦国版アウトレイジ、首がめっちゃ飛ぶらしい、そしてなぜか妙に腐女子にウケている、だった。そもそも日常的に戦争がある戦国時代という時代背景もありつつ、終盤にかけて登場人物が死にまくるのは確かにアウトレイジとも言えるのかもしれないし(アウトレイジ未履修なので断定はできない)、1カット目から首無し死体が映るほど首は惜しげなく飛ぶし、匂わせでどころではなく公式カップリングがちゃんと存在するBL映画でもあった。事前情報で入ってこなかったのは、全編通してだいぶコメディだったことだ。重々しい雰囲気のシーンもかっこいいアクションシーンもあるはずなんだが、それすらも滑稽な面白演出に感じるレベル。といっても軽薄なわけではなく、湿っぽくて深みのある映像は重厚感がすごい……んだがなぜだかずっと面白いので、これは本当に笑っていいシーンなのか不安になって罪悪感すら感じた。あまりにコントすぎるとしてよく話題に挙がるのは秀吉・秀長・官兵衛の軽妙なやり取りだが、秀吉陣営はもはや風雲たけし城か??と思っていた。序盤常識人として登場し比較的視聴者側の親近感を集めていた光秀も、急に罪人を庭に集めて蘭丸キエエエーー!!をやり始めたときはお前もそっち側だったんかい!!と一気に距離を感じたし、冷静に考えれば最初の織田家臣軍勢揃い時の秀吉老けすぎだし、ツボにハマるとシュールから逃れられなくなる。

 北野武監督作品を見たのは恥ずかしながらこれが初めてなのだが、監督の持ち味であるという「人の命が軽い」という性質は、この1本にも濃く表れていたと思う。戦国時代という時代背景において、これはリアリティのある価値観なのではないかと思えた。史実考えれば老けすぎな秀吉は最初気になったが、パワハラの権化すぎる信長像も、そこまで「そうはならんやろ」とは思わなかったというか……意外と地に足着いている人物造形だったと感じた。戦国時代、しかも本能寺の変までの信長周辺の時代劇なんて何度も擦られている題材で、この作品も史実の進行という点では目新しさを感じたわけではないが(光秀×村重の公式カップリング、およびそこに信長が絡んだ謎三角関係は斬新といえば斬新だが……)、現実的で道徳倫理のない登場人物たちはある意味戦国時代らしくて良い映画だった。あと、本能寺での積年の恨みがこもった弥助の一太刀はスカッとしたなあ。

 この人の命の軽さは監督がベトナム戦争時の射殺の映像を見たことがきっかけと語ったインタビューを読んだが、荒木家一族郎党の処刑のシーンを見ていて思い出したのは大学時代受けた講義で見た『カティンの森』(2007/ポーランド)だった。WW2期にポーランド軍将校らがソ連軍に虐殺された、いわゆる「カティンの森事件」を描いた真面目に激重戦争映画だが、軍人たちが森に連れてこられて、堀を目の前に立たされて、後ろから射殺され死体が堀にどんどん溜まっていく描写が確かあった。荒木一族が堀の前に座らされて、続々と首を飛ばされていく様は、この『カティンの森』の描写を彷彿とさせた。淡々と、あっけなく人の命が失われる凄みがあって、全編ニヤニヤが止まらない映画であっても、このシーンだけは真顔にならざるを得なかった。

 この映画で一番好きな場面は、清水宗治切腹シーン。伝統的な手順を踏んで、仰々しく切腹というイベントを遂行しようとする宗治を、視点を変えずただ長尺で流すところに、いわゆる武士道を解さない秀吉のイライラが表れているようで可笑しかった。小舟の上でもたもたしている間(宗治自身は一生懸命やっているわけだが……)、日光に照り輝いた水面が感動できるほど美しいのに、秀吉陣からはよしろと野次が入る無粋さが面白い。

 

今月のまとめ

 累計視聴数・・・3本

 目標値大幅に超えて達成!意識すると見ようと思うものだなあ。今月は邦画ばっかりだったので、次月以降は日本以外の作品も見たい。今のところ2月公開の『ボーはおそれている』が気になっているが、アリアスター監督作品を一人で見て立ち直れなくなったら怖いので、誰か一緒に見てくれる人がいれば検討したい。あと今度日本公開が決まったオッペンハイマーの伝記映画は、オッピー(オッペンハイマーの史実の愛称。本当に史実です)好きなフォロワーたちについていって見に行く予定なので、決まり次第おいおい。

2023年度上半期おでかけまとめ(4月~9月)

 2023年度のお出かけを備忘録にした記事。前編です。

 

04/12 「有吉の壁展」池袋パルコ(東京都豊島区)

ジャンボ尾形と人間のツーショ。まあまあでかい

 毎回欠かさず見ている「有吉の壁」、またなんか変なことやってる……と思っていたが機会があったので行った。

 番組のファンなら嬉しい展示やギミック(洗濯機とか)があり、だいたい毎週見ているフォロワーと一緒に行ったので過去回思い出しつつワイワイできて楽しかった。前回のブレイクアーティストライブの衣装展示とカメラマン加賀くんの写真展示が会場の約半分くらいを占めていたが、こちらも履修済だったので楽しめた。KOUGU維新の衣装のブース(エリアの中央)には並々ならぬ熱意で写真撮ってるガチオタ女性が何人かいて、感想としては「強いな〜」だった。

 KOUGU維新については、正直なところ私もほぼ最古参オタクなので何も言えない。初回TV放送を見て友人がドハマりし、その影響もあり地獄のyoutube生配信、工ミュもブレイクアーティストライブも2回とも履修しており、しまいには(?)ファンブックも持っているため、傍から見れば完全にガチオタである。

 ストーリーなんてあってないようなものではあるが、一応まだ完結していないので、今年もブレイクアーティストライブあるといいな。実際の衣装は、やっぱり近くに寄って見るとチープで、この粗さがこのコンテンツの良さなんだよなあと思った。

 

05/03 氷川丸(神奈川県横浜市

これが「エモい」というやつか

 海に浮かぶ重要文化財氷川丸。現時点で一番好きな大河ドラマが『いだてん』なので、主要登場人物であった嘉納治五郎が客死した船がまさにこの氷川丸ということで、実物を拝めてテンション上がりまくりだった。それだけではなく、海なし県出身なので、そもそも船が滅多に見れない珍しいものだからより一層興奮した。まだ5月と言えども中々暑く汗をかく日だったので、船上の潮風が気持ちよかった。氷川丸、GWにしてはけっこう空いてたんだけどどうして……?公園の方でパレードやってたからかなあ……

 

05/03 横浜みなと博物館・日本丸(神奈川県横浜市

 氷川丸を下船した後、中華街でお昼にしようと思ったらそれどころではない人混みだったが意地で小籠包と胡麻団子のセットを手にいれ、移動し午後行ったのが横浜みなと博物館。やはりGW真っ只中の中華街は無謀だった。隣のドッグ跡に練習船日本丸がおり、日本丸の方が先に閉館(閉船?)してしまうとのことで日本丸から観覧。

ビルのすぐ手前に船が浮かんでいる、脳がバグりそう

 2隻目の船!このころにはようやっと海に慣れ、さらに既に歩き回った分の疲労もあり比較的テンションは落ち着いている。やはり高級旅客船だった氷川丸と比べると大きく違いがあって楽しかった。そもそも日本丸は帆船だし、違いの方が多いが。

ノリで着物の羽織着ていったらフォトスポットの背景に何となく溶け込んだ図

 横浜みなと博物館はその名の通り、横浜港に焦点を当てつつ横浜の歴史を知れる展示で興味深かった。やっぱり開国がフィーチャーされるので、近現代史の比重が比較的多めだったような気がする。近年リニューアルしたらしく、館内は綺麗でおしゃれ、ギミックの効いた展示も多くわくわくした。建物自体も、日本丸の展示ドックを含めた広範囲に整備された広場に組み込まれる形になっており面白い。さすがおしゃれシティ・横浜……

あまりに夜景すぎる夜景

 

06/25 しながわ水族館(東京都品川区)

ペンギン。めちゃくちゃ暑そう

 今年は6月時点で既に暑かった。コンクリートジャングル(?)の照り返しでヘロヘロになりながらたどり着いた都会のオアシス・しながわ区民公園、そしてその中に建てられたしながわ水族館。この大森エリア、地方出身者から見れば十分都会のコンクリートジャングルだが、こうやって公園もあるし貝塚もあるし、程よく癖になる土地だなと思う。

 品川区にはここの他に「アクアパーク品川」という水族館もあるようで、どちらも品川が入っているため少し紛らわしい。こっちはザ・昔ながらの水族館といった雰囲気で、展示内容は子ども向けで規模もそれほど大きくなく、落ち着いていてこれはこれで良い。実は品川区内へ通勤しているので、チケットの割引が効いたのもラッキーだった。

 テンション上がってたので、最近水族館界で流行っている気がするぬいぐるみくじもした。ウミガメでした。

07/22 「がちょん十二郎」銀座博品館劇場(東京都中央区

 おでかけ……というより推し活。対象が対象だけに、「推し」と言うと若干ニュアンスが違う感じもあるがここではとりあえず「推し」としておく。

 私は人混みが苦手なのか何なのか、一人で人のいるところに出掛けるのが苦手だし、さらに推し事において「自分以外のオタクを視界に入れたくない」(ついでに「自分の存在を推しや他のオタクに認知されたくない」)タイプのオタクであるため、こういった現場は一番メンタルゴリゴリ削られる。でもそこまでしても行きたいライブだから、毎年苦しみながら行っている。配信がないということもあり、ファンとしてはそれでも行きたいライブなので、毎年なんとか同行者探して連れて行くけど、それでも腹壊したり手が震えて小銭落としたりする。なんで私はいつもこんななんだ……

 配信なしライブのネタバレ感想を書くのはアレなので、感想のみ抽出するならば「楽しい!キモい!怖い!キショい!楽しい!」みたいな感じ。暴力ありシモあり、これらがいつ起きるが分からないゾクゾク感が良いので、確かに配信するのは難しいのかもしれない。

 

08/09 「テート美術館展」国立新美術館(東京都港区)

これで「ナタラージャ」は嘘だろ 好き

 キービジュになっていた、日光を照り返す水面の絵画が気になった展示。在学中そこまで仲良かったわけでもない後輩を誘って行った。ありがとう後輩ちゃん……

 正式タイトルは「テート美術館展 光― ターナー印象派から現代へ」なので、テート美術館所蔵の「光」にまつわる作品を集めた展示らしかった。この場合の光は物理的なものだけでなく宗教(キリスト教)的な意味も含められており、印象派以前の中世絵画の展示もあった。さらに絵画だけでなく立体作品、現代アート系の作品の展示もあり、基本は時代順に並べられた構成だけれど、合間合間に立体作品が登場するので飽きがこなくて面白かった。

 

08/09 「美術館のわるものたち」国立西洋美術館(東京都台東区

中央女性の足元に注目 見づらいけど……

 こちらは同行者の後輩ちゃんリクエストの展示。絵画(西洋画)に描かれた「わるもの」をテーマに展示した小規模な企画展。常設展チケットで入れる素晴らしさ。こういうテーマ先行の展示って新たな視点があって興味深いし、作品の有名さではなく企画力で勝負してきている感じがいいよな~と思う。

 何気に西美自体が初だったのだが、後輩ちゃんの用事の都合で時間が切迫しており、見れたのはこの展示のみだった。今度リベンジしたい。

 

08/09 「古代メキシコ展」東京国立博物館(東京都台東区

すごくゆるい。好き

 この日は後輩ちゃんと別れた後別の友人と飯を食う予定になっていたが、まだだいぶ時間がある、そして急に土砂降りに降られ雷も鳴りだしとんでもない荒天で屋外にもいられない、という状況になり、これは天啓だと思いソロトーハクを敢行した。

 この展示、以前よりだいぶ気になっており、行ける機会をわりと本気で狙っていたので今回はねがったりかなったりな状況だった。そこまでに興味を持ったきっかけは、この企画展の関連番組としてNHKで放送されていた「まやまやぽん!」だ。本展示で扱うマヤ・アステカ・テオティワカン文明の文化を教育番組風に紹介する5分間番組なのだが、キャストがあのちゃんとトムブラウンみちおという時点でだいぶ奇天烈だし、生贄文化が色濃いこの文明は子ども向けテイストの方向性とは逆行するし、つまりはそう、みんな大好きNHKの高クオリティーな狂気を浴びれる番組だった。ノーモーションで突如差し込まれる「生贄を捧げる像・チャクモールさんの絵描き歌」とか、勝負に負けたぽんくん(演・みちお)が心臓になってるとか。妙に癖になってハマっていた。

 番組中にも感じていたが、実際に展示を見て、この地域・時代の文明の遺産や像のキモくてゆるくてかわいい作風(?)が現代日本人には刺さりそうだな、というか私には刺さった。あと、自分が全く詳しくない文化だからこそ、展示を見る中で初めて知ることも多く刺激的で楽しかった。また、今回ソロで参戦したため自分のペースでゆっくり見れて満足度が高かった。入館時既に夕方だったというのもあり、休みながら時間をかけて回ったら結局閉館時間に追われてフィニッシュだったため常設展はあまり見れなかった(仏像ゾーンは無理やり見た)けど、満ち足りた時間だった。

 

08/20 伊豆シャボテン公園静岡県

サボテンの中に巨頭。癖がすごい風景

 先日上野で飯を食った友人から誘われ鈍行で日帰り伊豆旅行へ。絶対日帰りで旅程立てる距離ではないので、ここ以外にはどこへも行けなかったが、途中の電車の車窓など旅情溢れる風景で楽しかった。例によって海の見える風景に異様に興奮してしまうんだよな。

 サボテンと動物がメインの動植物園なのだが、ここにもあったマヤ.アステカ文明遺跡(のレプリカ)。先日履修したばっかじゃん!と嬉しくなってくる。サボテンと像とカピバラが同居している、なかなかすごい絵面が見られた。

 帰路熱海で途中下車し、行った居酒屋で通された席がアクリル板一枚隔ててカップルと相席になる座敷で、お互い気まずい状況の中魚を食いながら飲んでいたら、お会計で目ん玉飛び出るかと思った。カップルが帰ったあとは半個室みたいな落ち着いた雰囲気で、長い付き合いの友人だし昔話も盛り上がり、そこそこの量を飲み食いしていたのだった。友人がそんなもんじゃない?こないだサイゼでもこのくらいいったよ、とさも普通のように言うので、食いすぎだよてめえら!!!とキレキレにツッコミ入れてしまった。それくらいででっかい声出すなよと自分でも若干思ったが、ケチな性格なのでつい……でも今回は友人の誕生月だったのでちょっと多めに出したよ。

 

09/06 丸善ジュンク堂書店コラボ企画「文豪クリームソーダ」(神奈川県川崎市

(手前)太宰治『女生徒』(奥)宮沢賢治銀河鉄道の夜

 わりと長く繋がっているフォロワーが行きたいと言っていたので、こちらからお誘いして文クリ(文豪クリームソーダ)オフ会が実現した。

 フォロー歴はそこそことはいえ、特段関係性も深いわけではなかった。急に誘われてさぞかし驚いただろうしなんだこいつと思っただろう。しかし、だからこそ良い機会だし会ってみたいなと思ったのだった。まだ暑いとはいえ暦の上では秋に差し掛かり、人恋しくなったのもあるかもしれない。

 フォロワーは通学の関係で横浜によく来るとのことだったため、私も定期圏内で行ける川崎の丸善に決まった。リプでのやり取りは多少あるものの、通話等するほどの仲でもなかったためそもそもちゃんと合流できるかすら怪しかった(実際多少時間かかった)が、垢抜けた印象のかわいくていい子だった。明るいし、多分素敵な親御さんの下で良好な家庭環境で育てられた子なんだろうなと思う。普段なんとかまともを取り繕おうとしているが、そもそも陰キャであることは変わらない私は、若干の引け目を感じないでもなかった。

 Twitterの界隈の話とか同世代の世間話など、共通の話題でそこそこ盛り上がったけど、お互い軽く猫被ったまま終わった感じはした。関係性構築わりとすっ飛ばしたもんな、申し訳ない。

 ただ、撮った写真を共有するのでLINEを交換したら、あとでメンション付きでツイートしてもいいですか?聞かれたので快諾したのだが、今現在までメンションどころか該当のツイートさえ行われていない。あれは何だったんだ……?彼女は着物が好きらしく、私も大学時代縁あって着物着たりしていたので、今度着物オフしましょうね!という話にはなったが、本当に実現するのか否か。

 文豪クリームソーダ自体は値段に見合う上品な甘さで美味しかった。太宰治は前述の暗い中学生時代を支えてくれた、正しくは気が変になるくらい依存していた存在だったので、好きとも何とも言えない思い入れがある。太宰の描く弱い人間がどうも自分に重なってしまい、自分を分かってくれるのは太宰しかいないと思っていた。今回行くことが決まってから、改めて『女生徒』を読んだらやはり良くて感動して泣きそうになったが、当時と今では自分に刺さる文章が異なっていて、文学作品の良さ、哲学性を感じた。今回は自分の個性みたいなものを、本当は、こっそり愛しているのだけれども、愛して行きたいとは思うのだけど、それをはっきり自分のものとして体現するのは、おっかないのだ。が刺さりました。

 

09/17 鈴本演芸場(東京都台東区

構内。年齢層が高めで落ち着いている雰囲気が良い

 現在名古屋在住の大学時代のサークルの先輩から、OBOG会のグループラインに唐突な連絡が入った。平沢進のライブの遠征で東京にくるので、空いている人いたら上野で寄席に行こうの会をしませんか、とのこと。そう、このサークルは落語研究会だ。

 「寄席に行こうの会」は、毎年GW頃に新入生の親睦会も兼ねてみんなで東京の寄席に行くという、サークル伝統のイベントだった。私は1年生の年は不参加で、それ以降はコロナでそもそも開催できなくなり、一回も参加することなく卒業してしまった。だから失った青春を取り戻したい気持ちもあり、参加を決意した。とはいえ、同じ代には愛嬌があって後輩力も高く、先輩たちとも随分仲良くしていた同期がいたし、それに比べれば私は関係性が深いわけでもなかったので、こんな機会が訪れるとは思っておらず緊張した。参加者は自分の他には先輩二人と、代が一つも被っていない後輩二人の計5人。自分の立ち位置が微妙すぎてさらに緊張した。しかし会ってみるとすぐ当時の空気感に戻った。というより、全然変わっていなかった。みんな個性が強いが、常に変わらぬ距離感で接してくれるのがこの落研のいいところだ。山梨のド田舎大学で、少人数で小規模な落研だったが、いやだからこそ、先輩後輩関係なくメンバー同士の交流がゆるく続いている。その関わりの中に自分も入れていたのがとてもありがたかった。サードプレイスの大切さは巷でよく説かれているけれど、実際のところ仕事と家の往復で毎日が過ぎていく中でそれを見つけるのは難しい。そう思っていたが、わりと気づかぬところに居場所はあったのかもしれない。

 コロナ禍が明け、寄席内の飲食が解禁されていたのが良かった。『目黒のさんま』とか『千両みかん』とか有名どころの噺も多くて楽しかった。唯一嫌だったのは、この日が三連休中日のため、演者がみんなそれに触れてきたこと。私は前の日仕事次の日仕事だから三連休なんて存在しないんだよ……!現実を忘れにきたのに若干現実に引き戻された。

 

まとめ

 旅行がストレス発散の一大要素になっているけど、一人で出歩くのが極端に苦手なので、社会人になって気軽に誘える友人もいなければ時間も限られていて焦る気持ちがだいぶあったけれど、半年経ってみると意外といろいろ行けたな~という所感。友達が少ないので、将来的に誘える人は減る一方だと考えると一人旅できるようになった方がいいな、と思うけど、今のところとりあえず深く考えなくてもいいかなという気になっている。年度後半もできそうなときにできる分だけのおでかけをしていきたいな~!

【感想】『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて』

ジュリー・ソンドラ・デッカー、上田 勢子 訳『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて』明石書店、2019

書影。こういうの載せるとちょっとブログっぽいよね

 私は今のところ、アセクシュアルなんじゃないかな~~と思っている。「今のところ」「なんじゃないかな~~」というのは、人に恋愛感情を持ったことがないという「ない」の部分が継続されているだけで、この後の人生で人を好きになる可能性が、限りなく低いとしても完全には否定できず存在している以上、断定がしづらい。このセクシュアリティが大変なのは、このように「ない」ことを説明しなければいけない、悪魔の証明をしなければならないところだと感じる。

 手に取ったきっかけは、先日、自分の知人同士が自分の知らない間に付き合っていて、自分の知らない間に別れた愚痴を聞かされて、自分をおいて世界が回っているような疎外感を覚えて少し悩んだからだった。愚痴を言ってきた知人には私が恋愛感情がない、という話は以前したはずだったのに、それを「人に興味ない人」というひどく雑な解釈でもって捉えており、「人に興味ない人だったら気にしないでしょ」という理由で愚痴を吐く相手として選んだという、あまりに人のことを考えてなさすぎる行動だったのも腹が立った。腹立たしいし悲しいしでひとしきり落ち込んで、多少落ち着いてきた頃に、「アセクシュアル」という、自分のこのスタンスについてしっかり理解したいと思った。思えばこれまで本を読んで学ぶことはなかった。

 この本、「すべて」と銘打たれているから学術的で難しい内容なのかと思いきや、翻訳文の独特な表現はあるにせよ、全編会話調の文章で読みやすい。さらに本書で述べられていることは実はそれほど多くなくて、「アセクシュアルは病気でもなければ障害でもない、治せるものではないし、幼少期や過去の恋愛でトラウマがあってそうなったのでもない、単なる性的指向なのだ」といった、冷静に考えれば至極当たり前のことを言葉を変えシチュエーションを変え何度も繰り返しているような内容だ。がしかし、こんな単純なことを丁寧にじっくり繰り返し述べないと伝わらない世の中なのだな、と思い至って暗い気持ちにはなる。

 先日、大学時代のサークルの先輩2人と久しぶりに会ったとき、前述の友人の話(友人はサークルの同期だった)を私がしたら、その場の全員が「自分は恋愛感情とか分からないからな~~」と首をかしげてしまい、結局話はなんの進展もせずに終わって可笑しかったことがあった。大学を出て社会人になった途端、会社の先輩からは彼氏いないの?と話を振られる、同期たちは恋バナをしたがる等、世間はこんなに恋愛至上主義だったのかと愕然としたが、そう思ったのもこれまでアセクシュアルに近いスタンスの人間たちに囲まれたコミュニティで生活していたからなのだな、と感じた出来事だった。あのころの生活は帰ってこないし、本書で知ったように世界はまだまだ優しくないし、「人に恋をしない人」は年を取る度に風当たりが強くなってしまうだろう。憂鬱になりそうだけど、自分以外にも同じような人がいると知れて何かホッとしたような気持ちになれた。

 本を読んだ感想というより、自分のことにリンクしてしまって文章もまとまらなかった。とりあえず今は、もしもうダメだ~~!!!という気分になったら一回アセクシュアルの集まりに参加してみよう、と思っている。