才太郎畑

日々の備忘録にしたい

2024年映画見たよ記録【1月】

 今年の目標は、月に1本以上映画を見ることに決めた。媒体は問わず、映画館での上映も家でアマプラも金曜ロードショーでも、とりあえず最後まで見ることができたら1本とカウントする。決まりはこれだけ。努力が嫌いで飽き性でもある怠惰な人間なので、1年を通しての目標を完遂するにはこれくらい緩くないと続かない。きっかけはせっかくアマプラ加入しているんだから今年こそはちゃんと活用しないと、というケチな気持ちだ。とはいえ、平日の帰宅後も休日も気づけばSNSのスクロールやネットサーフィンで時間を無為に過ごしてしまうので、強制的に良質なインプット機会を確保するのも大切だと思う。

 この記事はその目標の証明として、見た映画の感想を毎月書いていこうという取り組みだが、ネタバレを相応に含む内容になるかと思われるため気を付けて閲覧されたし。

 されたし、って言葉、人生で一度くらいは使って見たかった。これで人生の目標も一個達成できたね。

 

 

渇水』(2023/日本)

 私自身の個人的な理由で楽しめず悲しかった映画。これが月に1回映画を見ようプロジェクトの第1本目とは……

 水道料金未払いの家に督促に行く水道局員が主人公のドラマだが、私は督促業務が仕事内容にある会社に勤めており(水道局ではないです)、つまり主人公の言動全てがノイズになってしまった。そのため、本来捉えるべき角度からの感想が抱けなかった。以降で書く感想の内容は全くもって参考にしないでほしい。仕事でどことなく落ち込んだ気分になってしまい、情緒めちゃくちゃにしてほしい(私はこの欲望からしんどい映画見るのがわりと好き)……と思い、ちょうどよさげな尺で重そうなテーマの作品をアマプラでピックアップしたため、視聴前にちゃんと内容を精査していなかったのだ。この日は否が応でも仕事のことを思い出してしまい、さらに落ち込んで、この後しばらくメンタルの調子が悪かった。

 主人公の後輩を筆頭にして、水という自然にあるものに料金をかけ、払えなかった者に供給を遮断する、自分たちのしていることは道徳的にどうなんだ?という疑念を覚える人物が度々登場する。主人公も最初こそ仕事だからと言うものの、徐々に意識しはじめたようでセリフの端々にのぼるようになり、最終的にはぶっ飛んだ行動に出てしまう。この思考自体に現実味を感じられず、言動がチープに映ってどうも入ってこない。うちの職場はみんな殺意高いので。とはいえ、水道はガスや電気などのライフラインと比べ滞納時に供給遮断されるまでの猶予が長い、つまり生命維持において不可欠である度合いが高いとみなされているので、それを止めてしまった時の状況が目に見えてしまう、という部分が要因にあるのかもしれないが。

 唯一感情が上向きになったのは、この作品の舞台は群馬県前橋市で実は地元、水道局の事務所内に映るぐんまちゃんのぬいぐるみとか前橋市水道局のキャラクターとかがとても懐かしかったことだった。

 

ゴジラ-1.0』(2023/日本)

 ゲ謎と共にXのTLで騒がれまくっており、自認はミリオタではないとはいえ兵器の類は好きであったため、アカデミー賞ノミネートの数日後に見に行った。レイトショーだったが、わりと人が多く注目度の高さを感じた。

 劇場で見るべき映画だと思った。ゴジラの咆哮、破壊音、衝撃音など、音の要素が大きく、重低音が大音量で浴びれるという点で劇場体験がものをいう作品だと感じた。特にクライマックスの「海神作戦」の場面では音に加え、その重厚な戦闘描写に自然と身体が震えるほど興奮した。一言で言うならば快感、気持ちよかった。この作品によって私はパニック映画がわりと好きなのだと気づかされた。ゴジラがずっと恐ろしくて、人間がいくら手をつくしても死なない絶望感に大興奮だった。特に主人公たちが新生丸でゴジラと出くわし戦わざるを得なくなったとき、助けに来た高尾がボッコボコにされるとき、ゴジラの核ビームのチャージを見守ることしかできないとき、「海神作戦」にて陽動役で海上に出ていたはずの駆逐艦が、ひしゃげて空から飛んでくるとき。そういえば以前、普段映画を見ない母が金ローか何かで見た『MEG ザ・モンスター』(2018/アメリカ)を絶賛していた時期があった。血は争えないということか。

 この頃、劇場ではゲ謎こと『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023/日本)や『映画 窓際のトットちゃん』(2023/日本)、そして今作と戦中・戦後を時代背景とした映画が同時公開されている。ゴジマイの主人公・敷島は元特攻隊員だが、確か特攻隊員がテーマになった恋愛映画も同時期に公開されていなかったか。なぜこの時期に戦争をテーマとした映画が続々と公開されたのか、めちゃめちゃ興味深い。ゲ謎やトットちゃんは今のところ未履修のためどんな演出がされていたのか分からないが、これらの映画がどういった形で戦争を捉えているのかという観点は、すなわち令和の現代の戦争観がどういったものなのかを表す指針になると思われる。考察して論文書いて詳しい人。ゴジマイでは、海神作戦でゴジラを倒しきれない可能性があることを知った敷島が、戦後のどさくさに紛れ残っていた局地戦闘機震電での特攻を画策するが、実は機体に脱出装置が施されており生還する、かつての戦時体制のアンチテーゼとするように描かれているのが印象的だった。戦時中の人命軽視批判、政府への反感の部分は海神作戦の前夜の集まりにて語られているが、脱出装置の存在はゴジラの口の中に突っ込んだ後に知らされることになるため、おいおい~~ここで特攻成功しちゃったらダメだろ~~??と見ながら若干不安になっていた。原作はまあまあ特攻賛美な『永遠の0』(2013/日本)でさえ、特攻の瞬間は原作をちょっと改変して、どっちともつかない「無」の演出が行われていたと聞いたのに(『永遠0』自体は未履修です。これは大学時代、戦争映画についての講義で聞いた話の受け売り)、と思っていたがちゃんともっと面白くなっていた。ゴジラの銀座襲撃時に亡くなったと思われていた、ヒロインの典子が生きていたことも分かり、全員生存ハッピーエンド、で終わるわけではなく、典子の首には不気味な痣があるし、海中では死んだはずのゴジラの蠢きが示唆され終わらない恐怖を観客に与えて終わる。震電の特攻が成功しゴジラの沈黙が確認され、無音の中全員が次々に敬礼をするシーン、あれは特攻に対してではなく、ゴジラという「海神」を倒した神殺しに対する厳かさだったのだろう。この作品は『シン・ゴジラ』(2016/日本)とは反対に、民間主導の対ゴジラ戦がテーマになるが、それに至る時代背景の設定付けは、戦後政治史詳しくないとはいえ無理がないか、と思わないではなかったし、その点での批判もあるようだ。主題が史実設定のリアルさに左右されないものだったので、個人的には気にならなかった。

 人間ドラマ部分はそこまで重要視して見ていなかったものの、典子を失った敷島に野田先生が海神作戦への参加を持ちかけたとき、敷島の目が真っ黒であり、ここがゴジラ絶対殺すマンとしての敷島が誕生した瞬間だな、という演出が印象的だった。

 

娼年』(2017/日本)

 毎週聞いているカズレーザーのラジオ(SBSラジオ「週刊!しゃべレーザー」。リアタイではなくポッドキャストでですが)で、「ドMの美少年が出てくる」という話をしていたのがきっかけだった。ど、ドMの美少年……!?と衝撃を受け、あまりに見たすぎてアマプラ探してすぐに見た。身体を売る男性の話、といううっすらした情報は知っていたので多少は覚悟していたが、兎にも角にも濡場が多い……!私はアセクシャルのケがある、という自覚があるので(以下の記事でも書いていた)、作品のテーマ上仕方ないとはいえこうも多いと嫌悪感が優ってしまう。

sai-yasai.hatenablog.com

 ちなみにドMの美少年は性癖の都合上だいぶテンション上がったし嬉しかったが、話の中の1場面のみだったので残念だった。機会あれば原作小説を読もうと思う。

 これはアセクシャル関係なくシンプルに嫌いなだけかもしれないが、キスシーンがどうしても気持ち悪くて、なんで人間はこんな唾液まみれの粘膜接触を楽しめるの……??というドン引き状態になってしまったので、この作品はおおむねNot for meだった。ただ退廃的で淫靡なだけではないしおしゃれなので、好きな人は好きだと思うけど。

 

【番外編】『首』(2023/日本)

 これは去年の年末に見たので今月の1本にはカウントしないが、「映画、見てえ……」という気持ちをつくってくれた、そして月1で映画見ようと決意させてくれた良い映画だったため感想を書く。

 長年の付き合いの友人と飲みに行ったときに布教を受け、その後仲の良い先輩も感想をXで呟いているのを見かけ、自分の信頼している人間が2名以上良いという意見を発しているというお墨付きを得て見に行こうと決めた。

 私が見たのは仕事終わりのレイトショーだったが、曜日の関係なのか阿題材によるものなのか、観客は私を含め6人程しかおらずかなり快適だった。若干前目の席を取ったため前に座る人はおらず、雑音も聞こえずスクリーンをひとり占めしたかのような劇場体験が得られた。実はこれが人生初レイトショー、人生初一人映画館だったのでそれだけでも感動はひとしおだ。学生時代は気軽にいける距離に映画館がなかったし、金もなかったから(交通費だけで映画1本見れるような地方に住んでいた)、映画を見ることの優先順位は相応に低く、オタク友達に誘われた時のみアニメの劇場版だとか漫画の実写化作品だとかに行く程度だった。今は、通勤定期圏内の主要駅に降りれば近場にある3館の映画館から見たいものを選べるほど、エンタメの享受に恵まれた土地にいる。人生は分からないものだなと思う。

 事前情報で入っていたのは戦国版アウトレイジ、首がめっちゃ飛ぶらしい、そしてなぜか妙に腐女子にウケている、だった。そもそも日常的に戦争がある戦国時代という時代背景もありつつ、終盤にかけて登場人物が死にまくるのは確かにアウトレイジとも言えるのかもしれないし(アウトレイジ未履修なので断定はできない)、1カット目から首無し死体が映るほど首は惜しげなく飛ぶし、匂わせでどころではなく公式カップリングがちゃんと存在するBL映画でもあった。事前情報で入ってこなかったのは、全編通してだいぶコメディだったことだ。重々しい雰囲気のシーンもかっこいいアクションシーンもあるはずなんだが、それすらも滑稽な面白演出に感じるレベル。といっても軽薄なわけではなく、湿っぽくて深みのある映像は重厚感がすごい……んだがなぜだかずっと面白いので、これは本当に笑っていいシーンなのか不安になって罪悪感すら感じた。あまりにコントすぎるとしてよく話題に挙がるのは秀吉・秀長・官兵衛の軽妙なやり取りだが、秀吉陣営はもはや風雲たけし城か??と思っていた。序盤常識人として登場し比較的視聴者側の親近感を集めていた光秀も、急に罪人を庭に集めて蘭丸キエエエーー!!をやり始めたときはお前もそっち側だったんかい!!と一気に距離を感じたし、冷静に考えれば最初の織田家臣軍勢揃い時の秀吉老けすぎだし、ツボにハマるとシュールから逃れられなくなる。

 北野武監督作品を見たのは恥ずかしながらこれが初めてなのだが、監督の持ち味であるという「人の命が軽い」という性質は、この1本にも濃く表れていたと思う。戦国時代という時代背景において、これはリアリティのある価値観なのではないかと思えた。史実考えれば老けすぎな秀吉は最初気になったが、パワハラの権化すぎる信長像も、そこまで「そうはならんやろ」とは思わなかったというか……意外と地に足着いている人物造形だったと感じた。戦国時代、しかも本能寺の変までの信長周辺の時代劇なんて何度も擦られている題材で、この作品も史実の進行という点では目新しさを感じたわけではないが(光秀×村重の公式カップリング、およびそこに信長が絡んだ謎三角関係は斬新といえば斬新だが……)、現実的で道徳倫理のない登場人物たちはある意味戦国時代らしくて良い映画だった。あと、本能寺での積年の恨みがこもった弥助の一太刀はスカッとしたなあ。

 この人の命の軽さは監督がベトナム戦争時の射殺の映像を見たことがきっかけと語ったインタビューを読んだが、荒木家一族郎党の処刑のシーンを見ていて思い出したのは大学時代受けた講義で見た『カティンの森』(2007/ポーランド)だった。WW2期にポーランド軍将校らがソ連軍に虐殺された、いわゆる「カティンの森事件」を描いた真面目に激重戦争映画だが、軍人たちが森に連れてこられて、堀を目の前に立たされて、後ろから射殺され死体が堀にどんどん溜まっていく描写が確かあった。荒木一族が堀の前に座らされて、続々と首を飛ばされていく様は、この『カティンの森』の描写を彷彿とさせた。淡々と、あっけなく人の命が失われる凄みがあって、全編ニヤニヤが止まらない映画であっても、このシーンだけは真顔にならざるを得なかった。

 この映画で一番好きな場面は、清水宗治切腹シーン。伝統的な手順を踏んで、仰々しく切腹というイベントを遂行しようとする宗治を、視点を変えずただ長尺で流すところに、いわゆる武士道を解さない秀吉のイライラが表れているようで可笑しかった。小舟の上でもたもたしている間(宗治自身は一生懸命やっているわけだが……)、日光に照り輝いた水面が感動できるほど美しいのに、秀吉陣からはよしろと野次が入る無粋さが面白い。

 

今月のまとめ

 累計視聴数・・・3本

 目標値大幅に超えて達成!意識すると見ようと思うものだなあ。今月は邦画ばっかりだったので、次月以降は日本以外の作品も見たい。今のところ2月公開の『ボーはおそれている』が気になっているが、アリアスター監督作品を一人で見て立ち直れなくなったら怖いので、誰か一緒に見てくれる人がいれば検討したい。あと今度日本公開が決まったオッペンハイマーの伝記映画は、オッピー(オッペンハイマーの史実の愛称。本当に史実です)好きなフォロワーたちについていって見に行く予定なので、決まり次第おいおい。